以前勤めていた職場で、
上司と部下のこんなやり取りを見たことがある。
「あの……◯◯さん、少しご相談があるのですが」
ある若手社員が困ったような表情で、ベテラン上司のデスクへ向かう。
すると、その上司はどこか誇らしげな顔で腕を組み、話の途中でこう遮ったのだ。
「ああ、それはだな、こうやって対処するのが正解なんだよ。
前にも似たような事例があったから、俺の言う通りにやっときな」
長年の経験から、ベテラン上司は即座に「完璧な答え」を提示して見せた。
本人は「頼れる先輩として、手っ取り早く解決策を教えてあげた」と、
満たされた表情を浮かべていた。
しかし、相談したはずの若手社員の表情を見ると、
どこか冷めていて、小さく「……あ、はい。ありがとうございました」
と頭を下げて自席に戻っていった。
そして案の定、その若手は後で同僚に
「結局、自分の意見は何も聞いてくれず、
一方的にアドバイスされて終わりました」
と苦笑いしながら愚痴をこぼしていたのだ。

部下が困っているなら、自分が蓄積してきたノウハウを惜しみなく授け、
手っ取り早くトラブルを解決してあげる。
後輩思いのベテランに、非常にありがちな行動である。
本人は「良かれと思って教示している」
「親身になってアドバイスしている」と本気で信じている。
だからこそ、アドバイスをした後に部下がどこか冷めた顔をしていたり、
距離を置かれたりすると、「せっかく教えあげたのになぜ引いているんだ」
と困惑してしまう。
しかし、残念ながらその認識は大きな間違いだ。
頼られてもいないのに上から一方的に「答え」を与える態度は、
本人が思っている以上に部下からの信頼を損ね、
周囲から「教え魔」として煙たがられる最大の原因になるからだ。
職場で嫌われてしまう上司は、
自分の知識を誇示するように「正解」を語り、
部下の思考と成長の機会を奪ってしまう。
「こうすればいい」と一方的に正解を教えてしまう行為は、
部下から「自分で考える機会」を奪い取り、自律的な行動を削いでしまう。
相談を受けたとき、すぐに正解を語り始めない。
同じ目線で一緒に考えるからこそ、
部下は「自分の意見を尊重してくれている」と感じ、
自ら思考して動き始めるのである。

動いた分、新しい自分になる!
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